果物を食べると鬱予防になる?鬱病の仕組みや鬱予防におすすめの栄養素などを紹介
近年問題となりつつある鬱病。ストレスが原因となって鬱病を発症する人は多く、現代病の一つとして問題視されています。
そんな鬱病ですが、近年では「果物が鬱病予防に効果がある」といわれています。ある調査結果によると、「果物を多く食べた方が鬱病になりにくかった」といった発表もあり、鬱病を予防する可能性として期待されているのです。
なぜ果物が鬱病予防になるのか。鬱病となる仕組みや、鬱病予防に効果のある栄養素などを紹介します。
鬱病となる仕組み
鬱病となる仕組みは、脳内物質であるセロトニンが不足するからだと考えられています。
セロトニンとは、脳内にある神経伝達物質の一つです。主に、ドパミンやノルアドレナリンを制御し、精神を安定させる働きがあります。「幸せホルモン」とも呼ばれており、精神を落ち着かせることで、心のバランスを保っているのです。
そのため、何らかの理由によってセロトニンの分泌量が減ると、心のバランスが保てなくなります。ちょっとしたことでも感情が大きく揺らいでしまい、その結果、鬱状態となるわけです。
セロトニンが減る原因は、主にストレスです。仕事の疲れはもちろん、人間関係などのさまざまなストレスによって分泌量が低下します。
近年はストレス社会ともいわれており、日常的にストレスを抱える人は少なくありません。そのことから、鬱病は現代病の一つとしてみられています。
鬱病対策には果物がおすすめ
鬱病対策として、近年では果物を食べることが推奨されています。果物に含まれるフラボノイドが鬱病予防に効果があると、国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らによって発表されたからです。(参考:Translational Psychiatry誌2022年9月26日掲載『https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36163244/』)
フラボノイドとは、ポリフェノールの一種であり、自然由来の植物色素の総称です。植物のさまざまな部分に含まれており、細かく分類すると4,000以上の種類があるとされています。
フラボノイドの主な働きは、抗酸化作用です。含まれる成分が活性酸素を除去することで、皮膚や血管などの老化を抑制してくれます。免疫力も向上することで病気にもなりにくくなり、美容と健康に効果のある栄養素ともいえるでしょう。
そんなフラボノイドですが、フラボノイドの摂取量が多いほど、鬱病の発症率が低いといった研究結果が発表されました。フラボノイドは脳由来神経栄養因子や酸化ストレス、神経炎症の抑制作用により抗鬱効果を持つことが示唆されており、鬱病を予防する可能性として期待されています。
鬱病に効果のある栄養素
フラボノイド以外にも、鬱病には、以下の栄養素が効果があると考えられています。
ビタミン
ビタミンとは、三大栄養素の代謝を助ける栄養素のことです。主な栄養素としては、ビタミンAやビタミンEなどが挙げられます。
中でも、鬱病予防に効果があると考えられているのは、ビタミンB群とビタミンDです。ビタミンB群の中でも、神経伝達物質の合成に必要なビタミンB6と葉酸は、特に必要な栄養素といえます。
また、ビタミンDもセロトニンの調整に必要であり、鬱病予防に欠かせない栄養素です。それぞれの働きによって神経の働きを整え、心のバランスを保ってくれます。
ビタミンは、体内で生成できない栄養素です。さらに、余分なビタミンは体外に排出されてしまうことから、毎日摂取する必要があります。
鬱病を予防するためにも、レバーや魚介類といった、ビタミンB群やビタミンDが含まれる食材をいただいてください。
ミネラル
ミネラルとは、一般的な有機物に含まれる4元素(炭素・水素・窒素・酸素)以外の元素のことです。主な栄養素としては、鉄分やナトリウムなどが挙げられます。
中でも、鬱病予防に効果があると考えられているのは、鉄分と亜鉛です。鬱病患者は血中に含まれる鉄分と亜鉛の割合が低く、鉄分と亜鉛を補充することで鬱病が改善されたといった報告がされています。
「鬱病になると味がしなくなる」といった話をよく耳にしますが、それは、亜鉛が足りないことで味覚障害に陥っているからだといえるでしょう。
鉄分が不足すると、赤血球(ヘモグロビン)が不足してしまいます。赤血球は体の各所に栄養と酸素を運ぶ働きがありますが、赤血球が不足することで満足に運ばれなくなるのです。
その結果、慢性的な疲労感や焦燥感などが生じるようになり、やる気が出ないことから鬱病になってしまいます。
鬱病を予防するためにも、赤身肉や大豆製品といった、鉄分や亜鉛が含まれる食材をいただいてください。
アミノ酸
アミノ酸とは、たんぱく質を構成する有機化合物のことです。ロイシン、リジン、メチオニンなど計20種類ほどありますが、どの栄養素が欠けてもたんぱく質を合成できません。
アミノ酸の一つであるトリプトファンは、セロトニンやメラトニンの材料となる栄養素です。トリプトファンが不足することでセロトニンも分泌されず、その結果、鬱病となってしまいます。
鬱病を予防するためにも、乳製品やナッツ類といった、トリプトファンが含まれる食材をいただいてください。
脂肪酸
脂肪酸とは、脂質を構成する栄養素です。食品中の脂肪の9割が脂肪酸でできているといわれており、魚に含まれるDHAやEPAも、脂肪酸の一種といえます。
DHAやEPAは、脳の働きを活性化させる栄養素です。セロトニンを受容する役割があり、魚をよく食べる地方の人は鬱病になりにくいともいわれています。
鬱病を予防するためにも、DHAやEPAなどの脂肪酸が含まれる、青魚をいただいてください。
まとめ
果物には抗酸化作用のあるフラボノイドが豊富に含まれており、フラボノイドの働きによって、鬱予防の効果が期待されます。酸化ストレスや神経炎症を抑制することで、神経伝達物質の働きを正常に保つのです。
ただ、この研究結果はあくまでも一つの研究結果にすぎず、より結果を確実にするためにはさらなる研究が必要となります。調査は中高年を対象としたもので若年者への一般化が限られるなど、厳しくいうなら、限られた範囲でしか効果が見込めないわけです。
それでも、果物が鬱予防になったことは一つの事実といえます。果物は美容と健康にも効果のある食材です。毎日果物を食べて心身を健康に保ってみてください。
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