スピリチュアルケアによる新しいケアの方法とは?
近年、終末医療の現場で耳にするスピリチュアルケア。スピリチュアルとは「霊的」という意味があり、つまりは「霊的にケア(介護)する」ことといわれています。
しかしながら、「霊的にケア」をするといわれてもよく分かりません。多くの人は、「宗教と関係があるの?」と疑問に思うことでしょう。
スピリチュアルケアとはどのような方法なのか?スピリチュアルペインと合わせて紹介します。
スピリチュアルケアとは
スピリチュアルケアは、生死間の不安を取り除くための治療用語です。人は誰でも前向きに生きていますが、病気や怪我などをしてしまうと不安になります。特にがんや半身不随など重病なほど弱気になりやすく、中には「生きているのが辛い」と人生に諦めてしまう患者もいることでしょう。
そのような苦痛(スピリチュアルペイン)に対して、意味をもたせてあげるのがスピリチュアルケアになります。スピリチュアルペインは「身体的苦痛」「社会的苦痛」「精神的苦痛」とそれぞれ結びつきがあり、解消することでスピリチュアルケアにもつながります。
患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)をできるだけ良好にすることが、スピリチュアルケアの本質ともいえるでしょう。
スピリチュアルペインの種類
スピリチュアルペインは、大まかに7つの苦悩に分けられると考えられています。スピリチュアルケアをするためには、どのような苦痛があるのかを把握する必要があるでしょう。
意味の不明瞭
自分の意味を失うことに苦痛です。「自分がいなくても問題ない」「生きている必要はない」などと考えてしまい、生きる意味や目的を見失ってしまうことで苦痛を感じます。
死に対する不安
漠然とした死に関する苦痛です。「死ぬとどうなるのか」「死ぬことが怖い」など、死そのものに対して恐怖や不安を感じます。
怪我や病に対する苦痛ではなく、「なにも分からない」ことによる不安が苦痛を感じるといえるでしょう。
他にも、死ぬことで今までの努力や財産が無くなるなど、消失する不安も感じるようです。
尊厳の損失
みじめに感じることによる苦痛です。半身不随によって排泄や入浴ができないなど、自身の尊厳(プライド)が傷つくことで苦痛に感じます。
人によっては自分では何もできない悔しさも、苦痛の原因といえるでしょう。
罪の意識
他人に対する申し訳なさによる苦痛です。怪我や病で何もできない申し訳なさ、他人に迷惑をかける申し訳なさ、事故によって他人を巻き込んだ申し訳なさなど、他人に対する申し訳なさや罪による苦痛になります。
現実との悲嘆
現実と想像のギャップに対する苦痛です。「怪我する前は一流サラリーマンなのに、今は病室で仕事ができない」など、現実の姿が想像とかけ離れていることによる苦痛になります。
事故によって全身麻痺になるなど、時には想像を絶するギャップを持つこともあるでしょう。それによって生きる希望が失われ、よりスピリチュアルペインも深まってしまうのです。
関係性の損失
関係が途絶えることによる苦痛です。死別や離婚など、突然大切な人との関係が失われてしまうことは多々あります。無くなることによる空虚感や、孤独による寂しさなどから、絶望や苦痛を感じてしまうのです。
ペットロスなどもこれにあたり、場合によっては鬱病などの精神的苦痛を同時に感じてしまいます。
超越欲求
宗教など、超越的なことへの希求です。苦痛ではなく「天国は良い場所」「来世でも会いたい」など、現実を諦めてしまうことによる問題です。
苦痛ではないため良いように思えますが、死を受諾していることから生きることを諦めているとも判断できます。人によっては現実逃避と思うかもしれません。
宗教的考えが悪いわけではありませんが、現実を受け入れ、前向きに考えることも大切です。
トータルペインとスピリチュアルペインの関係性
スピリチュアルケア(ペイン)を知るためには、先にトータルケア(全人的苦痛)について知る必要があります。
トータルペインとは、総合的な痛みのことです。痛みには「身体的苦痛」「社会的苦痛」「精神的苦痛(心理的苦痛)」「霊的苦痛(スピリチュアルペイン)」の4つが存在していると考えられており、それらは互いに影響し合っていると考えられています。
例えば、事故で怪我をすることで身体的苦痛を感じ、治らない不安や不自由さから精神的苦痛を感じます。治療費や仕事が出来ないことで社会的苦痛も感じてしまい、怪我の状況や事故を起こした罪からスピリチュアルペインも感じてしまうでしょう。
もちろん、逆もしかりで、精神的苦痛や霊的苦痛があれば、本人の意欲が無くなり怪我の治りも遅くなります。
スピリチュアルペインのケアを行うためには他の苦痛のケアも、他の苦痛のケアをする場合もスピリチュアルペインのケアを視野に入れる必要があるのです。
スピリチュアルケアをするには
端的に言ってしまえばスピリチュアルペインは「意味による苦痛」です。「怪我をして痛いからつらい」「ペットロスがつらい」「居場所が無くてつらい」など、対象の損失や関連性が問題となります。
そのため、スピリチュアルペインをケアするためには、苦痛の元となる関連性をケアするひる必要があるのです。怪我の治療はもちろん、ペットロスには励ましたり、居場所が無ければ倶楽部やサークルなどを提案して居場所を作ったりなど、意味を与えて改善のサポートをしてあげます。
ただ、スピリチュアルケアに正解はありません。意味を見出すかどうかは本人の気持ち次第ですので、周りから意味を持たせるのは難しいでしょう。同じような苦痛を持つ人でも、同じようにケアできるとは限らないのです。
「身体的苦痛」「社会的苦痛」「精神的苦痛」の解消はもちろんですが、患者の話をよく聞いてあげて、共に考えながら寄り添ってあげることが大切といえるでしょう。
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