リジェネラティブ農業とはどんな農業？活動内容について紹介

リジェネラティブ農業といった活動を聞いたことはありますか？自然環境の改善を目的とした活動であり、SDGsに関係する活動から、近年注目がされています。
近年は温暖化の影響が激しく、世界的な問題となっています。これ以上の悪化を防ぐためにも、リジェネラティブによる考えは知っておかなければなりません。
リジェネラティブとはどのような意味なのか。リジェネラティブ農業の活動内容について紹介します。

リジェネラティブ農業とは

リジェネラティブ農業とは、自然の回復も目的とした農業のことです。日本語では「環境再生型農業」とも呼ばれており、化学肥料の不使用や不耕起などを行うことで、農業しながら自然環境の改善を目指します。
リジェネラティブ農業が注目される背景には、地球温暖化が関係しています。近年は科学技術の発展により、さまざまなことが便利になりました。農薬の使用による安定した生産や、作業の機械化による作業者の負担軽減など、農業においても科学技術による恩恵は大きいといえるでしょう。
ですが、科学技術の多くは温室効果ガス（CO2など）を発生させます。大量に発生した温室効果ガスはオゾン層を破壊し、近年問題となっています。
そのことから、これ以上の地球温暖化を防ぐためにも、リジェネラティブ農業による環境回復が求められているのです。近年は、環境保全を目的としたSDGsも話題となっています。リジェネラティブ農業は、SDGsを実現するための一環ともいえるでしょう。

リジェネラティブ農業の目的

リジェネラティブ農業の主な目的は、自然環境の回復です。これ以上悪化を防ぐためにも、再生を目的とした取り組みが求められています。
そのためにも、環境を整えることが大切です。土壌環境を整えれば、微生物が増殖し自然回復力が向上します。土壌が豊かになればミミズなどの土壌生物も増え始め、水分や炭素の保有量も増加するでしょう。
自然環境の回復を目指すためには、自然と共存することがとても重要です。そして、それを実行するのがリジェネラティブ（農業）となります。

リジェネラティブ農業の内容

リジェネラティブ農業は、主に以下のような方法が挙げられます。

不耕起栽培

不耕起栽培とは、土を耕さず農業を行うことです。一般的な農業は、土を耕した後に作物を育てますが、不耕起栽培の場合は耕さず、土が固いまま種や苗を植えていきます。
耕起をする主な目的は、土を柔らかくし作物を植えやすくするためです。土が固いままでは、作物を植えるのは一苦労となります。ほかにも、雑草の除去、有機物の分解促進、病害の抑制といった効果も期待でき、総じて、農業をしやすくするわけです。
ですが、耕起をすることで土壌が侵略され、土壌生物の住みかを荒らしてしまいます。もちろん、しばらくすれば戻ってはきますが、戻るのには時間がかかってしまうでしょう。
土壌環境を荒らさなければ、土壌生物たちの働きによって、土壌に多くの有機物を含ませることができます。それにより、土壌に多くの炭素を吸収させることが可能となり、SDGsが目指す、脱炭素の試みが実現できるようになるのです。

輪作

輪作とは、連作をせず作物の種類を周期的に変える方法のことです。仮に、1年目はジャガイモを育てたとした場合、2年目はジャガイモの代わりにニンジンを植えるといったように、同じ種類を同じ場所に植えないことで、土壌環境のバランスを保つようにします。
作物によって、必要となる栄養素は異なります。そのため、同じ場所で同じ作物ばかりを育てると、特定の栄養素が枯渇してしまうのです。
また、土壌環境は土壌に生息する微生物にも影響します。同じ作物ばかりを育てていると特定の微生物だけが増殖してしまい、場合によっては、作物を枯らす原因にもなるでしょう。
土壌環境のバランスを整えるためにも、輪作は必要となります。

間作

間作とは、育てている作物の間に、別の作物を育てる方法のことです。ニンジンとダイコンを交互に植えるといったように、複数種類の作物を同じ場所で育てるようにします。
間作も輪作同様に、土壌環境を整えるために必要なことです。複数種類の作物を育てることで、栄養や微生物が偏るのを防ぎます。
作物が育ちやすい環境を作るだけではなく、土壌バランスを整えることで、炭素を蓄えやすい、SDGsに適した土壌を育てるのです。

被覆作物の栽培

被覆作物とは、土壌表面を覆う作物のことです。ツタが多いマメ科の植物を始め、ヒエやクローバーなど、繁殖力が高い作物が該当します。
土壌表面を覆うことで、雨や風による土の流亡を防ぎます。ほかにも、土壌に含まれる水分の蒸発を防いだり雑草の発芽を防いだりなど、土壌環境を守るために、とても重要な要素といえるでしょう。
畑を休ませる意味合いもあり、輪作や間作と同じ効果が期待できます。土壌環境を保つことで、次に作物を育てやすくするだけではなく、脱炭素も目指せるのです。

化学肥料の不使用

化学肥料とは、化学工場で製造された人工肥料のことです。リン酸や炭酸カリウムなどが豊富に含まれており、作物の成長を効率的にサポートします。
作物の成長に必要な栄養素を効率的に与えることができるため、作物をより効果的に育てることができます。
ただ、人工的な栄養素は土壌環境を汚染し変えてしまいます。その結果、微生物や虫などに悪影響を与えてしまうでしょう。微生物などが減少することから、炭素の吸収もままなりません。
そのため、リジェネラティブ農業では化学肥料を一切使用しません。使用するのは、環境への影響を配慮した有機肥料を使用します。自然由来の肥料なら土壌環境への影響も少なく、微生物や虫などに影響を与えないことで、脱炭素を目指せるわけです。
ほかにも、リジェネラティブ農業では農薬も使用しません。環境に悪影響を与える要素を排除することで、自然と共存した農業を行います。

動物による除草

近年は、動物を使用した除草も話題となっています。ヤギやニワトリは食欲旺盛であり、放牧することで雑草や害虫をまとめて食べてくれるのです。薬品を使用しませんので、環境に優しい除草方法として多くの農家などで実行されています。
また、植物は踏まれたり食べられたりすると、再生しようと光合成が活発となり、より多くの炭素を土壌に取り込みます。その結果、脱炭素の取り組みがされるだけではなく、土壌生物にとって住みやすい、より豊かな土壌へと変化するのです。
除草のやり方も、ただ放牧するだけととても手軽です。問題点もありますが、人と環境、さらには動物にとってもメリットがあります。

コンポスト

コンポストとは、農業廃棄物を加工し、有機肥料として使う方法です。段ボールなどの紙類や剪定した枝などを微生物の力で分解し、堆肥へと変化させます。
近年は、生ごみを分解する家庭用のコンポストも販売されており、SDGsに向けた取り組みは盛んに行われています。
天然素材だけで作られた堆肥であり、使用しても土壌環境を荒らす心配はありません。ゴミの削減によって温室効果ガスの発生も防ぐ、エコなリジェネラティブ活動といえます。

サステナブル農業との違い

サステナブル農業とは、自然環境の保護も目的とした農業のことです。サステナブルとは「持続する」といった意味があり、自然汚染を防ぎながら、作物を育てます。
リジェネラティブ農業との違いは、「再生」か「持続」かの違いです。再生は「現状を改善」するのに対して、持続は「現状維持」を意味します。そのため、リジェネラティブ農業の方が、SDGsにより踏み込んだ取り組みといえるでしょう。
とはいえ、サステナブル農業でも自然保護をしていることには代わりありません。取り組む内容も似ていますので、サステナブル（農業）による取り組みも積極的に行ってください。

まとめ

リジェネラティブ農業とは、自然環境の改善を目指した農業のことです。現状問題とされている環境破壊に対して、農業を通じて環境の再生を試みます。
不耕起栽培や被覆作物の栽培などさまざまな方法が挙げられますが、共通していえるのは、土壌環境を変えないことです。土壌環境を変えないことで土壌生物を育て、それによって土壌を豊かにし、脱炭素を目指していきます。
農業以外にも、酪農や漁業などリジェネラティブに取り組む業界はいろいろあります。海外でもリジェネラティブについての取り組みは盛んに行われており、リジェネラティブ活動は世界的な取り組みといえるでしょう。
普段の生活の中でも、リジェネラティブにつながる活動はいろいろあります。農業従事者はもちろん、農業に携わらない人も、リジェネラティブについて意識してみてください。